カテゴリ:柔軟な血管と肌のハリにエラスチン( 4 )

肺の呼吸機能にも不可欠

肺の収縮を調整
 肺は、毛細血管がたくさん集まってできています。血管はエラスチンが豊富ですから、当然、肺もエラスチンの多い組織となっています。
 肺が、呼吸のたびにダイナミックな収縮を繰り返すことができるのも、エラスチンがたくさん存在しているためです。
 逆に、エラスチンが不足すると、肺に重大なダメージが生じます。
 肺の中は、肺胞と呼ばれる小さな部屋がたくさんあって、そこで酸素と二酸化炭素の入れ替えが行なわれています。
 エラスチンが不足すると、肺胞の1つ1つが大きくなって数が少なくなり、呼吸でとり入れた空気の交換がうまくいかなくなると考えられているのです。

慢性閉塞性肺疾患との関係
 実際に、肺に存在するエラスチンが分解を受けると、肺の機能が低下し、慢性閉塞性肺疾患という病気が引き起こされてきます。
 慢性閉塞性肺疾患は、喫煙などによって肺に慢性的な炎症が起こり、肺胞の破壊などが生じて、息切れや痰がひどくなる病気です。
 高齢者に非常に多い疾患で、亡くなるケースも少なくありません。近い将来、がんを抜いて日本人の死因トップになる可能性も示唆されています。
 しかし、決定的な治療薬がまだ開発されていないため、いったん発症すると、エラスチンの分解を阻害する薬を投与し続けるしかないのが現状です。たとえ回復しても、再発する可能性が高い疾患です。
 じつは、エラスチンの分解には、マクロファージという白血球が関わっています。マクロファージは、体内に異物が侵入した際、それを除去するために現場へ駆けつけてくる免疫細胞の一種です。
 このマクロファージと慢性閉塞性肺疾患の関係を調べたところ、マクロファージの前駆細胞(単球細胞)が、エラスチンの分解に関係する可能性が明らかになりました。
 まだ研究途上ですが、治療薬の開発につながる研究を今後も続けていきたいと思っています。


柔軟な血管と肌のハリにエラスチン
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by beauty-moisture | 2017-02-16 09:18 | 柔軟な血管と肌のハリにエラスチン

50年で半減する?
 年をとるにつれて、エラスチンと糖たんぱく質で構成されている弾性線維は減っていきます。
 弾性線維は、幼少期までは活発に生成されますが、その後はほとんど新たには作られないことがわかっており、新陳代謝(ターンオーバー)も非常に遅いものです。
 ですから、成人以降は減る一方で、50年で半減するといわれています。つまり、百歳になると計算上はゼロとなり、これが寿命と関係しているのではないかとも推測されています。
 加齢とともに弾性線維が減る理由として、弾性線維の劣化・断裂があげられます。
 弾性線維は、各組織のなかで絶えず伸び縮みすることを強いられるため、長い歳月の間に〝金属疲労〟のような状態を起こして、線維が切れてしまうことがあるのです。

弾性線維を脅かす活性酸素
 そしてもう1つ、弾性線維を脅かす最大の元凶とされているのが「活性酸素」です。
 活性酸素は、とても毒性の強い酸素で、体の中で多量に発生すると、周囲の組織が重大なダメージを受けます。「酸化」と呼ばれる現象です。
 結合組織の中の弾性線維も例外ではありません。エラスチンの足場である糖たんぱく質の量が減ったり、変性しやすくなります。
 糖たんぱく質は、通常、6本くらいの線維が紙縒りのように絡まり合って、1つの太い線維を形成していることは前に述べました。
 ところが、活性酸素によって酸化されると、より多くの線維が絡まりあって、異常に太い線維があちこちに生じます。そして一方で、別のところでは異常に細い線維が増える、といった現象が起こってきます。
 そうなると、エラスチンが糖たんぱく質にうまく沈着できなくなって、成熟した弾性線維を作るのが難しくなってしまうのです。
 活性酸素は、エラスチンも直撃しますが、これについては2章であらためて説明します。

活性酸素と老化の関係
 活性酸素は、体の中で絶えず発生しています。食事でとった栄養をエネルギーに変える際に副産物として生じますし、体内に侵入した異物を排除するための武器としても使われています。
 さらには、太陽の紫外線を浴びたり、強いストレスを感じたりしたときも、体の各組織で多量の活性酸素が発生します。
 それでも、体の中には、活性酸素を排除するしくみが備わっています。肝臓で作られるSOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)と呼ばれる酵素はその代表です。SODが十分に産生されている間は、体内で活性酸素がある程度発生しても、すみやかに消去できます。
 しかし、SODの産生量は、年をとるにつれて減っていきます。つまり、年をとるほど、活性酸素に対する抵抗力が衰えてくることから、弾性線維がダメージを受けやすくなると考えられます。
 それが結果的に、2章以降で紹介する皮膚のシワやたるみなどの老化現象、そして動脈硬化、血圧上昇、肺疾患といった老人性疾患の形で現われてくると考えられます。


柔軟な血管と肌のハリにエラスチン
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by beauty-moisture | 2017-02-15 20:57 | 柔軟な血管と肌のハリにエラスチン

コラーゲンとの関係

両者のバランスが大切
 エラスチンと同じ結合組織に存在する美肌成分としては、コラーゲン(膠原線維)のほうが有名です。
 一般に、コラーゲンも〝肌のハリを保つ〟たんぱく質と説明されていて、エラスチンとの違いがあいまいになっています。
 しかし、コラーゲンは、若干の弾性もありますが、様々な組織で力学的な強度や組織の硬さに関係しています。
 エラスチンによって伸びたり膨れたりした組織を、内側から引っ張って縮め、元に戻すのがコラーゲンの役目といえます。
 皮膚の場合で説明すると、皮膚を指で押したとき、元の形に戻す働きをしているのがコラーゲンで、皮膚を引っ張ったときに伸びるのはエラスチンの働きによります。
 また、内臓でいえば、形を維持しているのがコラーゲンで、血管や肺の収縮(伸縮性)を生み出しているのがエラスチンです。
 ですから、エラスチンが減って、コラーゲンの比率が一方的に高まると、組織はどんどん硬くなっていきます。伸びる力より縮む力のほうが強まって、組織が萎縮しはじめるのです。また、コラーゲンとともに、エラスチンも減ってしまうと、今度は皮膚にたるみが生じてきます。
 つまり、美しさと健康を保つには、両者のバランスがとても大切で、コラーゲンとエラスチンがともに豊富な状態が最良といえます。

組織によって比率は異なる
 エラスチンとコラーゲンの比率は、組織によって異なります。
 伸縮性が求められる部位にはエラスチンが豊富で、たとえば血管はエラスチンのほうが多く存在します。血管の40~50%は弾性線維といわれています。
 ただし、同じ組織の中にあっても、互いに結合して働くことはないと思われます。
 電子顕微鏡の解析でも、両者が交じり合ったり、結合する様子は確認されていません。あくまで、互いに少し距離を置いた形で存在していると推測されます。


柔軟な血管と肌のハリにエラスチン
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by beauty-moisture | 2017-02-14 07:39 | 柔軟な血管と肌のハリにエラスチン

結合組織とは何か
 エラスチン(Elastin)は、私たちの体の中にあるたんぱく質の一種です。体内では「結合組織」と呼ばれる部分に存在しています。
 まずは結合組織とは何か、というところから説明していきましょう。
 私たちの体は、細胞が集合した組織が組み合わさって各器官(臓器)を形作った構成になっています。
 そして組織は、4つに分けられます。皮膚の表皮や臓器の表面などの「上皮組織」、主に筋肉を構成する「筋組織」、全身に張り巡らされる神経の「神経組織」、体の構造を保持し支えている「結合組織」です。
 結合組織は正確には「支持組織」と呼ばれ、広い意味では軟骨や骨、血液、脂肪なども結合組織に分類されます。皮膚でいえば真皮~皮下組織(脂肪)の部分に当たります。

細胞外マトリックス
 私たちの体は約60兆の細胞でできていますが、細胞だけで構成されているわけではありません。細胞と細胞以外の物質(細胞外マトリックス)から成り立っています。
 細胞外マトリックスの役割はとても重要で、細胞を守る強固な土台としてや、組織の弾力性などに深くかかわっています。コラーゲンやヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸といった聞き慣れた成分が細胞外マトリックスです。
 わかりやすい皮膚でいえば、真皮の細胞(線維芽細胞)から分泌されたコラーゲンが、基礎を固める土台の型枠(網目状)の役目を担っています。そして、その型枠に作用して弾力性をもたらす役割を担っているのが、本書で紹介するエラスチンなのです。(真皮の下の皮下組織にはエラスチンはない)

細胞の調整役
 結合組織は、細胞の土台として重要なだけでなく、細胞の働きを調整する〝名参謀〟でもあります。細胞への物質の受け渡しはもとより、細胞を出入りする情報の管理も行なっています。なかでも、エラスチンはバリアのような役目を担っていると思われます。
 細胞の周りには、必要な情報とともに、好ましくない情報もたくさん飛び交っています。通常は、結合組織にあるエラスチンが、余計な情報はすべてブロックし、細胞を守っていると考えられています。
 ところが、エラスチンが不足すると、細胞の中に余計な情報がどんどん入って、場合によっては、細胞の新陳代謝に悪影響を及ぼしたり、細胞の質を変えてしまう危険性があります。
 実際に、遺伝的にエラスチンの体内合成が少ないマウスは、細胞の異常増殖を起こしやすいことが確認できています。
 こうしたことが、病気を引き起こす一つの大きな要因になっているのではないかと、私は考えています。

エラスチンは「環境たんぱく」
 いずれにしても、結合組織の役割は、常に細胞に寄り添ってサポートする縁の下の力持ちというイメージです。その中で働くエラスチンは、細胞が生活しやすい環境づくりに寄与していることから、コラーゲンとともに「環境たんぱく」とも呼ばれています。
 ちなみに、結合組織は全身に分布していますが、エラスチンはとくに皮膚の真皮や血管、肺、靭帯、軟骨などに豊富に存在します。


柔軟な血管と肌のハリにエラスチン
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by beauty-moisture | 2017-02-13 09:45 | 柔軟な血管と肌のハリにエラスチン