2017年 02月 22日
今は絶滅危惧ⅠA類に
1993年までは、スイゼンジノリ野生株が大量に自生していた特別保護区内(面積約2700㎡)でも、流速の遅い場所では、ボタンウキクサなどがかなり繁殖するようになり、1996年5月以降、珪藻類のMelosira varians が大量に発生しました。
ラン藻であるスイゼンジノリは、窒素固定を行なうため、水中の窒素濃度が低いほど、他の藻類との競合に適し、逆に、水中窒素濃度が上昇すると、ふだん清流に生育する珪藻類などが増殖を始め、スイゼンジノリは生存競争に敗れてしまいます。
進む富栄養化、減る湧水量
表1に、著者(椛田)が会長を務める江津湖研究会(創立:昭和57年2月)が行なっている水質分析の結果を示しています。
湧水湖である江津湖は、水温が年間を通じ約18~19℃とほぼ一定であり、pHも年間を通じpH7~8の弱アルカリ性です。
しかし、全窒素(T―N)が、1990年では、2.9~3.1㎎/?であったのが、2005年では、3.8~4.3㎎/?と増加していました。これは、湧水(地下水)そのものが富栄養化していると推定されます。
“砂踊り”の箇所も消滅
さらに、湧水量についてみると、江津湖およびその周辺の湧水量は、昭和37年には約89万?/日であったものが、現在では若干の年変動や季節変動はあるものの、平均すると約40万?/日 と半減しています。
特別保護区内においても、“砂踊り”が観察されるほどの湧水が生じている箇所が25年前には7ヶ所ありましたが、現在、そのほとんどが消滅しています(写真7)。
この湧水量の減少と、水質の富栄養化によって惹起された、珪藻類・Melosira varians の大量発生により、スイゼンジノリは光合成を阻害され、その野生株は一挙に激減しました。
そして、1997(平成9)年秋、スイゼンジノリ野生株は、環境庁(当時)作成による植物版レッドリストにおいて、絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来、絶滅の危険性が極めて高い種)に分類されました。
by beauty-moisture
| 2017-02-22 09:18
| 新発見「サクラン」と伝統のスイゼンジノリ